💡資料のポイント
Alphabet(Google)の資料は、機関投資家やアナリストといった「定量重視のステークホルダー」に向けて、情報を効率的に伝えることを第一に設計されています。ブランド個性やストーリーテリングよりも、正確性・整合性・比較性に軸を置いた設計思想です。
1. 視認性に優れたグリッドレイアウト
- 全スライドで縦横のアラインメント(整列)がきっちりしており、視線の動線が一定です。
- 表やグラフがページごとに統一されたテンプレートで配置されているため、比較しやすい。
複数期を通じた成長や差異を見せる資料では、「配置と構造の一貫性」が何より重要。
2. 最小限の配色と慎重な強調手法
- 強調すべき部分(成長率や利益の伸び)以外には過度な色やアイコンを使わず、視覚ノイズを抑えている。
- 棒グラフでは、対比に必要な色の使い分けはされているが、意味のない装飾色は皆無。
カラーパレットは多くなくてよい。重要なのは、「強調されるべき数値が自然に目に入るか」どうか。
3. データと見出しのヒエラルキーが明快
- たとえば「Revenues」「Operating Income」などのタイトルは大きく、「Q1’24」「Q1’25」のラベルや金額表示は一段階小さく、視線が「要点→根拠」の順で自然に流れる設計。
- グラフのY軸や補助線も簡略化されていて、読み取りやすい。
数値資料は、「まず何を見るべきか」→「どう解釈すべきか」が明示されていると、受け手の理解速度が格段に上がる。
4. ビジュアルの抑制と一貫性
- 画像やイラスト、写真などの装飾要素は一切なく、あくまで数値データとその推移にフォーカスした構成。
- 企業文化やプロダクトの紹介要素はほとんど含まれておらず、資料全体が「業績報告」に完全特化。
IR資料にストーリー性を加える場合でも、「財務パート」は極めて抑制されたトーンにするのが望ましい。
留意すべき点
このAlphabet(Google)の資料は、プレゼン用途としては地味に映る可能性あります。
成長戦略や事業ストーリーを期待する層には情報が不足しており、新規投資家や非専門家にとってはやや冷たく感じます。
ただ、米国では、日本のようにIR資料を作る文化はあまり強くなく、代わりに大規模なカンファレンス(そのときは最高のプレゼン資料を持ってくる)やオンライン配信、音声配信、IRページ自体がリッチだったりするので、日本とは資料の役割が違うと見て良いでしょう。