投資家がIRサイトを読む前に、AIがIRサイトを読んでいる。
先日、MIHアドバイザリー × シュタインズで開催したウェビナーでは、この変化をデータで示すべく、約3,700社の上場企業IRサイトをAI可読性の観点から独自にスコアリングした結果をご紹介しました。
おかげさまで上場企業約100社ほどに参加していただきました!
本記事では、その内容を改めて簡単にお届けします。
なぜ今、IRサイトの「AI可読性」が重要なのか
個人投資家の勉強会などを覗くと、ここ1〜2年で大きな変化が起きています。ChatGPTやGeminiを使って銘柄を絞り込み、さらにAIで分析を深める流れが定着しつつあるのです。
日本には上場企業が約4,000社あります。個人投資家がすべてを自分で追うことは不可能なため、AIに「有望そうな銘柄を10社ピックアップして」と聞くことは、もはや珍しくありません。決算が集中する時期には、「昨日発表された決算から注目すべき銘柄を教えて」という使い方も広まっています。
情報の入り口は、こう変わってきています。
検索エンジン → AIとの対話 → AIエージェントによる自動ピックアップ
この流れの中で、自社のIR情報がAIにうまく読み込まれないと、何が起こるでしょうか。
AIにIR情報が読まれないと起こる3つの問題
まずそもそもなにが問題になるのでしょうか?
① 要約されない・情報が間違う
決算ハイライトや業績情報がAIに取り出されにくいと、AIは「推論」で空白を埋めます。その結果、自社が伝えたい内容と異なる方向で情報が広まることがあります。
② 自社の情報が引用されない
PDFで決算資料を掲載していても、AIが参照するのは外部のニュースサイトや個人ブログに偏ってしまい、自社発信とは異なる解釈で伝わるケースが生じます。
③ 存在自体がピックアップされない
認知度の低い企業は、そもそもAIに取り上げられず、存在が埋もれるリスクがあります。
3,700社のスコアリング結果:実態はどうだったか
今回の調査では、約3,700社のIRサイトをクローリングで収集し、「AIが実際に答えられるか」を評価軸にスコアリングしました。従来のSEOチェック(ウェブルールやプロキシ指標のみへの準拠度)ではなく、以下の5項目をAIが回答できるかどうかで評価しています。
- 直近の数字がピックアップできているか
- 業績変動の要因説明があるか
- 将来性・ガイダンス・中期経営計画が述べられているか
- リスク・課題への対応が示されているか
- 競争優位性・投資ストーリーが述べられているか
情報量が多くても、投資判断に使える内容が薄ければスコアは低くなります。

全体の傾向
- 中央値・平均値はともに10〜20点程度
- 上位20%(80〜100点台)は全体の約170社のみ
- 最も多いのは0点近辺(有意なデータが取れなかった企業)
- 約200社はクローリング自体が難しかった(URLの問題、クローリング拒否設定、レガシープロトコルなど)
市場別では、プライム市場の平均が最も高く31点。グロース市場はプライムの約半分程度でした。プライム企業は業績予想やリスク項目の情報が充実している傾向があります。
時価総額別では、規模が大きいほどスコアが高い傾向があり、上位と下位で約2倍の差がありました。ただし、時価総額30億円以下でも高スコアを獲得している企業は存在します。
スコアが高い企業の共通点
スコア上位の企業には、いくつかの共通パターンがありました。
- IRページのテキストがHTML形式で直接公開されている
- IRトップページから0〜1クリック以内で重要情報にたどり着ける
- URL体系・見出し構造が明確
- 更新頻度が適切
- 投資家が聞きたい質問にテキストで答えるQ&Aが充実している
今回の調査で特に注目した企業をいくつかご紹介します。
【3997】トレードワークス(時価総額約160億円・スタンダード) /ir/investor以下に情報が集約され、社長インタビュー形式で数値と解説をテキストで掲載。将来性や重要施策もテキストで開示しており、Q&Aも投資家が本当に聞きたい内容を詳述しています。
【5027】AnyMind(時価総額約250億円・グロース)
業績情報と数字の根拠をテキストで記載し、FAQもPDFリンクで終わらせずに内容をテキスト掲載。IRトップページから競合優位性のページへ直接ジャンプできる構造が高評価でした。
【1332】ニッスイ(時価総額約4,100億円・プライム)
決算PDFに加え、要約をテキストで掲載。四半期ごとのQ&Aもテキスト公開しています。
【2425】ケアサービス(時価総額約30億円・スタンダード)
業績ハイライトをHTML形式の表で掲載し、AIが数値と項目名を正確に読み取れる形式を実現しています。
AI時代のIR格差:小さな企業こそ自発的な発信が鍵
トヨタやソフトバンクのような大企業は、自社でIR発信をしなくても、ウェブ上に膨大な外部情報が存在するためAIが空白を補いやすい状況にあります。
一方、小型株・新興企業は自社情報が少ないため、AIがピックアップすること自体が困難です。
だからこそ、小さな企業こそ積極的な情報発信が必要です。
IR部門とPR・広報部門の連携が薄い会社は、PRで発信している情報をIR側とも接続し、発信情報量全体を増やしていくことが重要になります。PRリリースを投資家目線で再解釈し、「この事業がどの業績項目にどう影響するか」という切り口でIRブログや解説コンテンツとして展開することも有効です。
評価が伸びにくい6つのパターン
以下に該当する企業は、AIからの可読性が低い傾向があります。
- 情報がPDFだけに載っている(HTMLテキストがない)
- IRトップページから情報が深い階層にある(奥に行くほどAIが処理しきれず漏れる)
- 情報があちこちに分散している(探索に時間がかかり漏れが生じやすい)
- 見出し構造が不明確(何の説明をしているのか分かりにくい)
- JavaScriptによる動的コンテンツに頼っている(スクロールで表示されるアニメーション系サイトは、AIがページを開いた時点では白紙と判断されることがある)
- Q&Aが充実していない(最低購入株数・住所などの基本情報のみで、投資判断に関わる質問が扱われていない)
明日から着手できる改善策
「まずは自社がAIからどう見られているか確認する」ことが出発点です。その上で、コストと効果のバランスを見ながら段階的に改善していきましょう。
小さなところから始める
- 自社ブログ・コラムを増やす
- noteでIR発信を行う(noteは日本語AI検索で引用されやすいプラットフォームです。自社IRサイトとの相互リンクと、canonicalタグの追加でさらに効果的になります)
- IRページを1ページ追加する程度であればコストは限定的
中程度の改善
- Q&Aページの新設・拡充(決算説明会で受けた質問をそのままテキストで掲載するだけでも効果的)
- URLの構造を整理する
- 決算ハイライトをテキスト(HTML)で掲載する
大規模な改善
- サイト全体のリニューアル(時間・コストがかかるため、上記の小さな改善で社内リテラシーを高めながら着手するのが現実的)
Q&Aより:よくいただいた質問
時間の関係上、ウェビナー中に応えきれないほどたくさんの質問をいただきました。こちらについては個別に相談していただければ幸いです。
おわりに
AIが投資家の情報収集の入り口になりつつある今、IRサイトの「AI可読性」はIR戦略の重要な一要素になってきています。
大規模なリニューアルが必要なわけではありません。Q&Aの拡充、テキストでの業績解説、noteの活用など、今日から始められることは確実にあります。
次回ウェビナーは2026年5月末を予定しています。AIの世界は1ヶ月で大きく変わります。最新の調査・事例をアップデートしてお届けしますので、ぜひご参加ください。
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