「直近の決算は、会社の計画どおりだったのか」。投資家が真っ先に確かめるこの問いに、IRサイトのWebページで答えている上場企業は、わずか1.4%(48社)でした。
株式会社シュタインズが東証上場企業3,321社のIRサイトを調べた結果です。増収増益でも、計画を下回っていれば評価は変わります。投資家がAIに企業のことを尋ねる時代、この「評価」をWebで語っていないことは、自社の決算の意味づけを他者に委ねることになりかねません。
会社計画比をWebで示す企業は48社(1.4%)
直近の決算が、会社計画(期初予想・修正予想)に対してどうだったか。これが各社のIRサイトで読み取れるかを調べました。
| 会社計画比がどこで読み取れたか | 割合 |
|---|---|
| IRサイトのWebページ | 1.4%(48社) |
| 決算短信・決算説明資料のPDFにだけある | 23% |
| 古い決算期の説明しかない | 6% |
| 見つからない | 70% |
7割の企業では、Webページにも最新の決算短信・説明資料にも、計画との比較が見つかりませんでした。PDFにだけ書いている企業を含めても、最新期の計画比が読み取れるのは4社に1社です。
市場別に見ても、Webページで示している企業はプライム2.4%、スタンダード0.7%、グロース0.7%にとどまります。プライム市場でも、40社に1社程度という水準です。
数字は出している。でも、評価を語っていない
売上高や利益の金額そのものは、8割を超える企業で最新期のものが読み取れます(WebページかPDFのどちらか)。足りないのは数字ではなく、その数字が計画に対して良かったのか悪かったのかという「評価」です。
同じ傾向は、ほかの項目にも表れています。

反対に、売上高・利益・前期比などの実績の金額や、競争優位、株主還元の方針は、多くの企業で読み取れました。AIが答えられないのは「数字の評価」「前提」「優先順位」といった、経営の判断や解釈にかかわる部分に集中しています。
答えがないとき、AIは何をするか
投資家がAIに「この会社の直近の決算は、計画どおりでしたか?」と聞いたとします。IRサイトに計画との比較が書かれていなければ、AIの答えは次のどちらかになります。
- 「計画との比較は見つかりませんでした」と答える
- ほかのサイトの情報や、AI自身の推測で補って答える
前者なら、投資家は知りたいことを知れないまま終わります。後者なら、御社が意図しない解釈で「計画未達」「上振れ」と説明される可能性があります。
計画との比較は、本来いちばん会社自身が語るべき部分です。語らなければ、誰かが代わりに語ります。これは開示の量の問題ではなく、自社の業績を誰の言葉で伝えるかという、経営の問題です。
うまくできている企業は、一文で書いている
Webページで会社計画比を示していた企業の記述です(2026年10月3日時点)。
| 企業 | Webページでの記述 |
|---|---|
| りそなホールディングス | 「期初通期目標(3,100億円)に対する進捗率は25.9%となっています。」 |
| かんぽ生命保険 | 「業績予想に対して進捗率23.7%と堅調に推移しております。」 |
| ミネベアミツミ | 「売上高1兆6,900億円、営業利益1,200億円とする5月公表の予想を据え置いています。」 |
| マツダ | 「通期営業利益見通し1,500億円に向けて、順調に進捗しています。」 |
| 川崎汽船 | 「営業利益が前期比9億円増益、5月公表比20億円増益の850億円」 |
共通しているのは、計画の数字と、それに対する結果(進捗率・据え置き・上振れ幅)が、一文に収まっていることです。特別な作り込みをしているわけではありません。
明日からできる4つのこと
- 決算のたびに、計画に対する評価を一文でWebページに書く 例:「通期計画◯◯億円に対し、第1四半期の進捗率は◯%で、計画どおりに推移しています。」
- 業績予想を出すときは、前提条件もWebページに書く 為替レート、主要な市況など。
- 予想をいつ公表したか、修正したかを日付付きで書く
- リスクは列挙だけでなく、影響の大きさや優先順位も示す どのリスクを重く見ているかを、会社自身の言葉で。
いずれも、決算短信や説明資料に書いている内容を、決算ハイライトなどのWebページにも一文添えるだけで対応できます。次の決算発表から始められる改善です。
調査の方法
- 対象:東証上場企業のうち、IRサイトからWebページを5ページ以上取得できた3,321社(2026年10月3日時点)
- 方法:IRサイトを自動でたどって集めたWebページ(1社あたり最大50ページ程度)と、IRサイトからリンクされた最新の決算短信・決算説明資料を、AI(大規模言語モデル)が25の項目ごとに判定
- 検証:AIが挙げた根拠の引用が実際にページ上に存在するかをプログラムで照合し、確かめられたものだけを「読み取れた」と判定。1社につき3回判定し、項目ごとに多数決で決定
- 「見つからない」:上記の範囲のページと資料から根拠を確認できなかったことを指します。集めていないページや、最新以外の資料に書かれている可能性はあります
- 「古い決算期」:根拠の文章に書かれた決算期が、各社の決算期と開示の時期から見て最新でなかったもの
詳しい採点の方法は、IR BASEの「スコアの仕組み」をご覧ください。
「数字」から「評価」へ
多くの企業は、すでに十分な数字を開示しています。足りないのは、その数字を会社自身がどう見ているかという一文です。
自社のIRサイトが、投資家の5つの質問・25の項目に対してAIからどう読まれているか。IR BASEでは、その判定と根拠をお示しできます。次の決算発表の前に、一度確かめてみてください。
自社IRサイトの診断にご関心のある方は、お気軽にお問い合わせください。