これまでの記事では、IR BASEの調査結果から、AIが答えにくいIRサイトの課題を見てきました。今回は一歩引いて、そもそもAI検索はどうやって答えを作り、IRサイトのどの記述を引用するのかを整理します。そのうえで、IR担当者が決算のたびにやるべきことを6つにまとめました。
この記事の要点
- AI検索で引用されるには、まず検索の候補に入ること、そのうえでページ内に質問へそのまま答えられる記述があることの両方が必要です。「SEOか、AI向けの文章か」の二者択一ではありません。
- IRサイトで効くのは、AI専用ページを増やすことではなく、数値・決算期・計画比・公表日を本文に明記すること、日付をはっきり示すこと、検索用クローラーを誤って止めていないかを確かめることです。
- 取り組みの中心は、決算のたびの「書き方」と「確認」です。大きな予算は要りません。
本記事は、各社の公式文書・特許・査読論文と第三者の観測研究にもとづく解説です。AI検索の内部の仕組みの多くは公開されておらず、サービスによっても異なるため、項目ごとに「公式に確認できること」と「研究・観測からの推論」を分け、確度を示しています。※投資助言ではありません。
AI検索は、どうやって答えを作るのか
すべてのAI検索が同じ仕組みで動いているわけではありません。ただし公開情報から見ると、大きく次の4つの工程で考えると理解しやすくなります。

① 質問を展開する。 Googleは、AI OverviewとAIモードで「query fan-out」という手法を使い、質問をサブトピックに分けて複数の関連検索を行うことがあると公式に説明しています。投資家が「A社の直近の決算は、会社計画どおりだったか」と聞けば、「第1四半期の営業利益、通期予想の進捗、決算短信、業績予想の修正」といった関連情報が、別々に探される可能性があります。ただし、各サービスの具体的な検索内容は公開されていません。
② 候補を集める。 Googleは、AI OverviewやAIモードのリンクとして表示されるには、ページがインデックスされ、通常の検索でスニペット付きで表示できる状態である必要があると説明しています。つまり「AI検索ではSEOが不要になる」わけではありません。ChatGPT検索やPerplexityは、Googleと同じインデックスや選び方で動いているわけではありませんが、検索・取得の仕組みを使う点は同じです。
③ 答えに使える部分を選ぶ。 Googleの特許「Generative summaries for search results」(US11769017B1)には、検索結果の文書から取り出した部分的なテキストを生成モデルに与え、回答の一部を出典と対応付ける仕組みが記述されています。「AIは必ず段落単位で評価する」とまでは確認されていませんが、実務上は質問への答えとして切り出しても意味が通る記述があるかと考えるのが正確です。
④ 回答し、出典を付ける。 検索で上位に出ることは候補に入るうえで有利になり得ますが、実際の回答では、質問との関連性や情報の明確さ、鮮度などから別のページが根拠になることもあります。「順位ではなく引用」ではなく、「順位だけでなく、引用されやすさも重要」と考えるのが妥当です。
従来のSEOに加えて、何が重要になるのか
この仕組みから、IRサイトがAIの回答で使われやすくなる条件を6つに整理します。
① 検索・取得できる状態になっていること(確度:高)
検索用のクローラーがページを取得できなければ、AIの回答候補にもなりません。OpenAIは、ChatGPTの検索に使うクローラー「OAI-SearchBot」を拒否すると、ChatGPTの検索回答に表示されないと案内しています。Perplexityも検索用の「PerplexityBot」を案内しており、GoogleのAI OverviewやAIモードは、通常の検索と同じくGooglebotによるクロールとインデックスが基本です。
注意したいのは、検索用と学習用のクローラーは別物だということです。OpenAIではOAI-SearchBotとGPTBotが分かれており、GoogleでもGoogle-Extendedを拒否しても、Google検索への掲載や順位を拒否することにはなりません。
② 質問への答えが、本文テキストとして書かれていること(確度:高)
Googleは、AI検索のための特別なschemaや専用ファイルを求めていません。一方で、重要な内容をテキストで提供すること、構造化データを見えている本文と一致させることを推奨しています。IRサイトでいえば、「営業利益は表を見れば分かる」ではなく、「2027年3月期第1四半期の営業利益は○○億円で、前年同期比○%増となりました」と本文にも書く、ということです。
③ 数値・対象・時点・出典が分かりやすいこと(確度:中)
プリンストン大学などの研究「GEO: Generative Engine Optimization」(KDD 2024)は、約1万件の質問を使った実験で、統計情報や引用、出典の明示が、生成エンジン上の見え方を改善したと報告しています。一部の手法では、論文の指標でベースライン比30〜40%程度の改善がありました。
もちろん「数値を入れれば引用率が40%上がる」という意味ではありません。ただ、何の数値か、どの決算期か、いつ公表したか、前年同期比や計画比はどうか、が本文から読み取れる状態にすることは、合理的な対策です。
④ 鮮度と「どの期間の情報か」が分かること(確度:中)
鮮度の重みはサービスによって違います。Ahrefsが約1,700万URLを分析した調査では、AIアシスタント全体としては通常検索より新しいページを引用する傾向があった一方、Google AI Overviewでは通常検索より平均約16日古いページが引用される傾向も見られました。
IRで大切なのは「新しいページを作ること」より、その数字がいつの決算なのかを、人にも機械にも誤解なく伝えることです。「最新決算」「当四半期」のような相対的な表現だけでなく、「2027年3月期 第1四半期」「2026年7月30日公表」と書く方が、取り違えにくくなります。
⑤ 通常検索での見えやすさと、Web上での言及(確度:中)
Seer Interactiveの調査では、Google検索の1ページ目に載ることと、AIの回答でブランドが言及されることに約0.65の相関がありました。Ahrefsの調査でも、Web上でのブランド言及数とAI回答での言及に相関が見られています。「AIでは検索順位が関係なくなる」とは言えません。ただし、いずれも観測研究で、因果関係までは示していません。
⑥ 「リンクされること」と「名前を呼ばれること」は別(確度:中)
Semrushの調査では、AI回答の出典の61.7%が、リンクとしては付いているものの、回答の本文では社名やドメイン名が呼ばれていない状態でした。115件の質問を対象にした小規模な調査ですが、引用されることと、社名が回答に出ることは別の指標として見ておく必要があります。
IRサイトに当てはめると、何が起きているか
IR BASEが東証上場3,321社のIRサイトを調べた結果を、ここまでの仕組みに重ねてみます。
| 調査で分かったこと | 仕組みから見た意味 |
|---|---|
| 「直近の決算は計画どおりか」にWebページで答えている企業は48社(1.4%)。約7割は最新のPDFを含めても見つからない | AIの問題以前に、一次情報の中に答えがない。AIは「確認できない」と答えるか、自分で計算するか、第三者の解説を探すことになる |
| 強みや戦略はWebで語り、最新の売上・利益はPDFにしかない企業が933社(28%) | PDFも読まれるが、「強み」と「それを裏付ける数字」が別の場所にあると、AIは両者を組み合わせて答えなければならない |
| 同じ公式サイトを参照しても、モデルによって1つ前の決算を「最新」と判断するケースがある | 決算期・対象期間・公表日がはっきりしていないと、どれが最新かの判断を誤りやすい |
なお、AIはPDFも読んでいます。IR BASEの30社検証では、公式サイトに限って正しく答えた回答の約半分がPDFを根拠にしていました。PDFは読まれる。しかし、最新性や意味まで常に正しく判断されるとは限らない。これが、IRサイトの設計を考えるうえでの出発点です。
30社検証は、各サービスのAPI版を使い、AIによる採点を含む小規模な観測実験です。一般ユーザー向けアプリの挙動をそのまま表すものではありません。
IR担当者が、決算のたびにやる6つのこと
1. 決算ごとに「答えになる文章」をHTML本文に書く
売上高・利益の金額、前期比、会社計画との関係、対象期間、公表日を、表だけでなく文章でも示します。
2027年3月期第1四半期(2026年7月30日公表)の営業収益は6,251百万円(前年同期比43.2%増)となりました。通期計画○○億円に対する進捗率は○%で、現時点では会社計画どおりに推移しています。
一文である必要はありません。大切なのは、その部分だけを読んでも、何の数字で、いつの数字で、何と比べているかが分かることです。投資家がスマートフォンで短時間に確認するときにも役立ちます。
2. 決算期・公表日・更新日を明示する
本文に「2027年3月期 第1四半期」「2026年7月30日公表」と書きます。古いページにも「2026年3月期の実績です」と対象期間を示し、最新と取り違えにくくします。
HTMLでは <time datetime="2026-07-30"> のような標準的な日付マークアップや、本文と一致した datePublished・dateModified も有効です。ただし、タグを付ければAIが必ず最新と判断するわけではありません。最優先は、人が見ても日付と対象期間が明確であることです。
3. 「語り」と「数字」を近づける
社長メッセージや中期経営計画を、戦略の説明だけで終わらせないようにします。
海外事業を成長ドライバーと位置付けています。当期の海外売上高は○○億円となり、前年同期比○%増加しました。
のように、主張の近くにそれを裏付ける最新の数字を置きます。詳しい表や財務諸表はPDFのままで構いません。Webには、投資家が聞きそうな質問への短い答えを残します。
4. 検索用クローラーを誤って止めていないか確認する
robots.txt、CDN、WAF、ボット管理の設定を確認します。このとき「AIボット」を一括りにしないことが大切です。
| 事業者 | 検索・回答への表示に関係するもの | 学習などに関係するもの |
|---|---|---|
| OpenAI | OAI-SearchBot | GPTBot |
| Googlebot(通常の検索と共通) | Google-Extended(拒否しても検索への掲載・順位には影響しない) | |
| Perplexity | PerplexityBot | 公式の説明を確認 |
役割が分かれているため、**「学習には使わせたくないが、AI検索ではIR情報を見つけてもらいたい」**という運用もできます(関連記事:「ボット対策が、AIをIRサイトから締め出しているかもしれない」)。
5. 転載先・配信先の情報も確認する
IR BASEの30社検証では、AIに普通に質問したときの正答の根拠は、公式サイトが約35%、開示資料の転載・配信が約35%、第三者の記事・データが約30%でした。小規模な検証のため比率そのものは一般化できませんが、AIが公式IRサイトだけを見ているわけではないことは分かります。
金融情報サイトやニュース記事などで、古い業績予想が残っていないか、修正前の数値だけが目立っていないか、社名や事業名が誤っていないかを確かめておきましょう。「外部に同じ数字が多いほどAIが信用する」と証明されているわけではありません。単純に、外部にある誤った情報も、回答の候補になり得るからです。
6. 自社名でAIに定点質問し、出典と決算期を記録する
決算発表の後や月に一度、次のような質問をAIに投げます。
- 「○○社の直近の決算は、会社計画どおりか」
- 「○○社の直近決算の営業利益はいくらか」
- 「○○社の主な成長戦略と、それを裏付ける最新の数字は」
- 「○○社の主なリスクと、その対応策は」
記録するのは回答だけではありません。参照された決算期、回答された数値、引用されたURL、それが公式サイトか第三者か、最新決算を正しく認識したか、社名が本文で言及されたか、まで残します。外部の計測ツールもありますが、正しい決算期を使ったか、どの開示を根拠に答えたかまで確かめるには、自社で同じ質問を定期的に投げるのが最も直接的です。
優先度が低いこと
- AI専用ページやAI専用ファイルを先に作る:Googleは、AI OverviewやAIモードに表示されるために、新しい機械可読ファイルや特別なschema.orgマークアップは不要と説明しています。llms.txtは提案段階の仕組みで、少なくともGoogle検索でAI表示されるための必須要件ではありません。導入を否定する必要はありませんが、本文の改善やクロール、日付、最新数値の明示より先に工数をかける理由は、現時点では乏しいでしょう。
- キーワードの詰め込み:GEOの実験では、キーワードを増やすだけの方法は有効な改善策になりませんでした。「半導体 成長企業 半導体 成長戦略」のような文章を書く必要はありません。普通の投資家が読んで分かりやすい文章を優先します。
- 構造化データだけを先に整える:構造化データは有用ですが、本文にない内容をJSON-LDだけに書いても意味がありません。Googleは構造化データと本文の一致を求めています。優先順位は、本文 → 日付・対象期間 → クロール・インデックス → 必要な構造化データです。
確度の一覧
| 主張 | 根拠 | 確度 |
|---|---|---|
| GoogleのAI検索は、質問を複数の関連検索に展開することがある | Google公式ガイド、I/O 2025 | 高 |
| Google AI Overview・AIモードのリンクになるには、検索インデックス上で表示可能である必要がある | Google公式ガイド | 高 |
| 検索用クローラーを拒否すると、そのサービスの検索回答に表示されない場合がある | OpenAI・Perplexity公式文書 | 高 |
| 重要な内容を、見えるテキストとして提供することが重要 | Google公式ガイド | 高 |
| ページ内の部分テキストやスニペットが、回答生成や出典付けに使われる | Google特許など | 中〜高 |
| 数値・出典・引用を明確にすると、生成エンジン上の見え方が改善する場合がある | GEO論文(KDD 2024) | 中〜高 |
| 自己完結した記述はAIに使われやすい | 上記の研究・仕組みからの推論 | 中 |
| 鮮度が引用に影響する | 複数の観測研究。サービスによる差あり | 中 |
| 通常検索での見えやすさと、AI上のブランド言及には相関がある | Seerの観測研究 | 中 |
| Web上のブランド言及と、AI回答でのブランド言及には相関がある | Ahrefsの観測研究 | 中 |
| 同じ情報が複数のサイトにあるほど、AIは正しいと判断する | 直接の実証なし | 低 |
| 表記揺れが、AIからの信頼を直接下げる | 直接の実証なし | 低 |
IR担当者が覚えておくべきこと
AI検索対策というと、「AIに読ませるための新しいページ」や「AI専用ファイル」の話になりがちです。しかし、いま優先すべきことはもっと基本的です。
- 検索できる
- 本文に書いてある
- いつの数字か分かる
- 何と比べているか分かる
- 最新の数字と古い数字を区別できる
- 主張の近くに、それを裏付ける数字がある
これはAI対策であると同時に、IRサイトそのものを分かりやすくする改善でもあります。大切なのは「検索順位を捨てて段落を最適化する」ことではなく、検索で見つけてもらい、そのうえで投資家の質問にそのまま答えられる記述を用意することです。
決算短信や説明資料を公開したら、それで終わりにしない。「今回の決算について、投資家が最初に聞く3つの質問は何か」を考え、その答えをWebの本文にも残す。決算のたびのAI検索対策は、そこから始めるのが現実的です。
IR BASEでは、自社のIRサイトが投資家の5つの質問・25の項目に対してAIからどう読まれているかを、判定と根拠でお示ししています。
出典
- Google Search Central「AI features and your website」
- Google Search Central Blog「Google 検索の Google AI エクスペリエンスでコンテンツのパフォーマンスを高めるための主な方法」(2025年5月)
- Google Search Central「公開日・更新日に関するドキュメント」
- OpenAI「Overview of OpenAI Crawlers」
- Perplexity「Perplexity Crawlers」
- Google 特許 US11769017B1「Generative summaries for search results」
- Aggarwal et al.「GEO: Generative Engine Optimization」KDD 2024
- Search Engine Land「Google says normal SEO works for ranking in AI Overviews and llms.txt won’t be used」
- Semrush「The Ghost Citations Study」
- Seer Interactive「What Drives Brand Mentions in AI Answers?」
- Ahrefs:AI検索における鮮度・ブランド言及に関する観測研究
- IR BASE:「『計画どおりだったのか』にAIは答えられない」「『強み』はWebで語られ『最新の数字』はPDFの中」「AIは決算短信などのPDFを読んでいる」「御社の『最新決算』、AIは1つ前の数字で答えているかもしれない」👈 弊ブログをぜひ参照してください!
調査の方法について
- 全社調査:東証上場企業のうち、IRサイトからWebページを5ページ以上取得できた3,321社(2026年10月3日時点)が対象。AIが25の項目ごとに根拠のURLと引用を返し、その引用が実際にページ上に存在するかをプログラムで照合しています。AIによる評価・分類を含むため、結果には一定の誤差があり得ます
- 30社検証:ChatGPT・Perplexity・Geminiの各サービスのAPIを使った小規模な観測実験です。一般ユーザー向けアプリの検索結果や、将来のモデルの挙動をそのまま表すものではありません
詳しくは、IR BASEの「スコアの仕組み」と各検証記事をご覧ください。AI IRスコアはAIによる自動評価であり、企業の業績・株価や投資の推奨を示すものではありません。