ブラウザで開けば、いつもどおり表示されるIRサイト。ところが、プログラムから同じページを取りに行くと、返ってくるのは「Access Denied」「403 Forbidden」「Just a moment…」という画面だけ。
IR BASEが東証上場企業約3,500社のIRサイトを自動で巡回したところ、少数ながら、人のブラウザには表示されるのに、機械的なアクセスには中身を返さないIRサイトがありました。不正アクセスや過剰なアクセスを防ぐ「ボット対策」が、AIのアクセスまで止めている可能性があります。
何が起きていたか
2026年10月の巡回では、次のようなサイトがありました。
| 状態 | 社数 |
|---|---|
| IRサイトの入口ページで、機械的なアクセスが拒否された(403などの応答) | 17社 |
| 機械的なアクセスは拒否されるが、本物のブラウザで開けば読めた | 5社 |
| 本物のブラウザで開いても拒否された | 16社 |
返ってきた画面は、主に次の3種類です。
- 「Access Denied」:アクセスそのものを拒否する画面
- 「403 Forbidden」:閲覧の権限がないことを示す画面
- 「Just a moment…」:「あなたが人間か」を確かめる確認画面。ブラウザでJavaScriptを動かさないと先に進めない
全体から見れば1%未満ですが、プライム市場の大企業も含まれていました。あるサイトでは、7月の巡回では問題なく読めたのに、10月にはブラウザ以外からのアクセスがすべて「Access Denied」になっていました。途中で設定が変わったと考えられます。
なぜAIに関係があるのか
AIがIRサイトの情報を使うとき、多くの場合、人のようにブラウザで画面を開くわけではありません。
- AIの学習や検索のために情報を集めるクローラー(ChatGPT、Claude、Perplexityなどのクローラー)は、プログラムでページを取得します
- AIが回答の途中でページを読みに行く場合も、多くはプログラムによる取得です

こうしたアクセスがボット対策で止められると、AIにとって御社のIRサイトは「Access Denied」としか書かれていないページになります。そうなるとAIは、御社のサイト以外の情報源(株価情報サイトやまとめサイトなど)から答えることになります。人がブラウザで確かめても「普通に見える」ため、社内では気づきにくいのも厄介な点です。
ボット対策は悪いことではない。ただ、設定を知っておきたい
ボット対策は、サイトを攻撃や過剰なアクセスから守るための大切な仕組みです。外す必要はありません。問題は、IR担当者の知らないところで、AIのアクセスまで止める設定になっていることがある点です。
- サイトの配信サービス(CDN)やセキュリティサービス(WAF)の中には、AIのクローラーをまとめて止める設定を持つものがあります
- サイトのリニューアルや、セキュリティサービスの導入・設定変更のときに、気づかないうちに有効になっていることがあります
- 「AIの学習には使われたくない」と「AIの検索で正しく紹介されたい」は、別々に設定できる場合があります
AIに読ませるかどうかは、各社が決めてよいことです。大切なのは、それが意図した設定になっているかを、IR部門が把握していることです。
明日からできる4つのこと
- サイトの管理部門や制作会社に確認する 「ボット対策・AIクローラー対策の設定はどうなっているか」「IRのページはAIのクローラーに読める設定か」を聞いてみてください。
- 方針を決める AIの学習に使われることと、AIの検索や回答で紹介されることを分けて考え、IRページをどう扱うかを決めます。
- IRのページは、確認画面なしで読めるようにする 決算やIRニュースのページは、投資家に広く届けるための情報です。人間かどうかの確認画面(JavaScriptでの確認)を挟まない設定が望ましいでしょう。
- ときどき、AIに自社のIRページを読ませてみる AIに「このページを要約して」とIRページのURLを渡し、中身を読めているかを確かめる。それだけでも異常に気づけます。
調査の方法と、この調査の限界
- 対象:東証上場企業約3,500社のIRサイト(2026年7月・10月に自動で巡回)
- 方法:IRサイトの各ページをまずプログラムで取得し、本文が少ない場合は本物のブラウザ(自動操作)でも開いた。そのときの応答(403などの拒否)と、ブラウザで読めたかどうかを記録
- 限界:拒否が「サイトの常設のボット対策」によるものか、「巡回で短時間に多くのページを開いたための一時的な制限」によるものかは区別できていません。7月と10月で拒否された企業の顔ぶれが一部入れ替わっていることから、一時的な制限も含まれていると考えられます。社数はおおよその目安としてご覧ください
詳しい採点の方法は、IR BASEの「スコアの仕組み」をご覧ください。
「守る」と「届ける」を、両立させる
該当する企業は全体の1%未満で、多くのIRサイトには関係のない話かもしれません。ただ、サイトのリニューアルやセキュリティ設定の変更をきっかけに、ある日から起こりうることでもあります。そして、起きていても、ブラウザで見ているかぎり誰も気づきません。
サイトを守ることと、投資家に情報を届けること。その両方が意図どおりになっているかを、一度IR部門の目で確かめてみてください。IR BASEでは、各社のIRサイトがAIからどう読まれているかを、項目ごとの判定と根拠でお示ししています。
貴社のIRは、AIにどう読まれていますか?
IR BASEでは、上場企業のIRがAIにどれだけ正しく読み取れるかをスコア化しています。銘柄コードと会社メールアドレスだけで、自社のスコアを無料で確認できます。開示の改善や発信体制づくりのご相談は、IR支援サービスまたはお問い合わせからどうぞ。