これまでの記事では、AIが答えにくいIRサイトの課題を取り上げてきました。今回は反対に、AIが答えやすいIRサイトは何をしているのかを見ていきます。
IR BASEが東証上場企業3,115社を評価した「AIの答えやすさ」(100点満点)で、90点以上だった47社と全体を比べました。上位の企業には、はっきりした共通点がありました。しかもその多くは、特別なシステムや大きな予算がなくてもできることです。
上位47社と全体の違い
90点以上の47社と全体を、次の項目で比べました。

どの項目でも、上位の企業は全体の約5〜17倍の割合で実践していました。上位47社には、スタンダード市場の企業(ゼロ、ソーバル、インテリックスホールディングスなど)や、グロース市場の企業も入っています。会社の規模ではなく、IRサイトの作り方で差がついています。
ここからは、上位の企業が実際にどう書いているかを5つの共通点ごとに紹介します。
① 最新の決算の数字を、Webページに文章で書く
上位の企業の85%は、直近の決算の売上高・利益・前期比をWebページに載せていました(全体は11%)。特徴は、表だけでなく、対象期間と前期比を含めた一文で書いていることです(⚠️リンク先は、時期によってページが更新されていたり、ページが無くなって開けないことがあるかもしれません)。
- ジーエス・ユアサ コーポレーション(96点):「売上高は、1,417億34百万円と前第1四半期連結累計期間に比べて98億55百万円増加(7.5%)しました」
- ソーバル(96点):「売上高は2,502百万円(前年同期比13.9%増)」
- DIC(96点):「当中間連結会計期間(2026年1月~6月)における当社グループの売上高は、前年同期比13.3%増の5,930億円でした。」
いずれも、第1四半期や中間期の決算のたびに更新されているページです。
② 「計画に対してどうだったか」を一言書く
全体ではわずか2%の企業しか書いていない「会社計画比」を、上位の企業は34%が書いていました。差は17倍。5つの共通点の中で、最も大きな差です。
- ソーバル:「当第1四半期連結累計期間においては、売上高、利益とも概ね計画通りに推移しております。」
- アイスタイル(94点):「FY26の営業利益は当初の業績予想を29%上回り着地することができました。」
- アルバック(96点):「売上高は、期初予想を上回る2,691億円(同7.1%増)となりました。」
どれも一文です。「計画どおり」「上回った」と、結果の評価を自分の言葉で書いていることがポイントです(関連記事:「『計画どおりだったのか』に、AIは答えられない」)。
③ 業績予想を、前提条件と公表日とセットで書く
上位の企業の91%は、業績予想の前提条件(為替レート、市況、コストの見通しなど)をWebページに書いていました(全体は13%)。さらに、いつ公表した予想なのかも明記しています。
- DIC:業績見通しの表に、為替レート(米ドル/円)の見通しを並べて掲載。「2026年5月15日に公表した業績見通しを以下のとおり修正します。」と、修正の経緯も記載
- アイカ工業(92点):「2027/3期の見通し(2026年8月4日時点)」と、見通しの時点を明記
- インテリックスホールディングス(94点):「2027年5月期連結業績予想 (2026年7月13日発表)」。別のページで「原油高や原材料価格の上昇に伴う内装工事コストの増加を一定程度織り込む」と、前提も説明
日付があれば、AIは「いつ時点の予想か」を正しく伝えられます。前提があれば、投資家は予想の確からしさを自分で判断できます。
④ リスクは「並べる」だけでなく「どれくらい効くか」を書く
リスクを列挙している企業は多いものの、その大きさや優先度まで示している企業は全体の5%です。上位の企業では32%でした。
- ゼロ(98点):リスクごとに「リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:大」と評価を記載
- 燦ホールディングス(98点):大規模な葬儀が「葬儀施行収入全体の1割前後を占めます」と、影響の大きさを数字で説明
- ウェザーニューズ(92点):説明会の質疑で「特に影響を受けるタンカー市場は我々の売上では大体1割ほど」と回答
投資家が本当に知りたいのは、「そのリスクは、どれくらい効くのか」です。可能性と影響を「大・中・小」で示すだけでも、リスクの一覧は判断材料に変わります。
⑤ AIの答えの根拠を、複数のページに持つ
上位の企業の26%は、AIの答えの根拠になったページが6ページ以上ありました(全体は4%)。業績は決算のページ、見通しは業績予想のページ、考え方は社長メッセージ、リスクはリスクのページ。役割の違うページが、それぞれ最新の情報を持っているのが特徴です。
説明会の内容を文章で公開している企業もあります。ウェザーニューズは、決算説明会の内容をIRライブラリで文章として公開しており、「27年5月期の通期業績予想になります。こちらも18期連続増収、5.4%増となっております」といった説明が、そのままAIの根拠になっていました(関連記事:「AIの答えを支えるのは、社長メッセージと説明会の書き起こし」)。
上位の企業でも、まだできていないこと
一方で、上位の企業でもほとんどできていないことがあります。ページの更新日を、機械が読める形で示している企業は、上位47社でも2%(全体は5%)でした。
「いつの情報か」を機械に伝える工夫は、まだどの企業も手つかずと言えます。裏を返せば、先に取り組んだ企業が差をつけられる余地です。
まとめ:明日から真似できる5つのこと
- 決算のたびに、最新の売上高・利益・前期比を、対象期間付きの一文でWebページに書く
- 「計画どおり」「計画を上回った」と、計画に対する評価を一言添える
- 業績予想には、前提条件と公表日を書く
- 主なリスクには、影響の大きさや可能性の評価を添える
- 業績・見通し・考え方・リスクを、それぞれ最新に保つページを持つ
どれも、決算短信や説明会資料に書いている内容を、Webページにも短く書き写すことで実現できます。上位にはスタンダード市場やグロース市場の企業も入っています。差をつけているのは会社の規模ではなく、IRサイトの作り方です。
自社のIRサイトが、5つの共通点のうちどれを満たしているか。IR BASEでは、25の項目ごとの判定と根拠をお示しできます。上位の企業との差を、一度確かめてみてください。
調査の方法
- 対象:東証上場企業のうち、IRサイトからWebページを5ページ以上取得でき、本文を正しく取得できた3,115社(2026年10月3日時点)。当方の本文取得処理の不具合で、本文を十分に読み取れていなかった約200社は除いています
- 方法:IRサイトを自動でたどって集めたWebページ(1社あたり最大50ページ程度)と、IRサイトからリンクされた最新の決算短信・決算説明資料を、AI(大規模言語モデル)が25の項目ごとに判定
- 検証:AIが挙げた根拠の引用が実際にページ上に存在するかをプログラムで照合し、確かめられたものだけを集計。1社につき3回判定し、項目ごとに多数決で決定
- 引用と点数:引用は2026年10月3日時点のページの内容。点数は「AIの答えやすさ」(100点満点)
- 「根拠のページ数」:Webページで点が付いた項目の根拠になった、異なるページの数
詳しい採点の方法は、IR BASEの「スコアの仕組み」をご覧ください。
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