AIが投資家の質問に答えやすいIRサイトとは、どんなサイトでしょうか。ページ数が多く、資料がそろったサイトを思い浮かべるかもしれません。
IR BASEが東証上場企業3,321社のIRサイトを調べると、答えは違いました。点数の高い企業でも、AIの答えの根拠はごく少数のページに集中しており、その中心は社長メッセージと説明会の書き起こしでした。決算や財務のページよりも、経営者自身の言葉のほうが、AIに多く読まれていたのです。
高得点の企業でも、根拠は「3〜4ページ」
「AIの答えやすさ」が70点以上の598社について、Webページで点が付いた項目の根拠が、何ページから取られているかを数えました。
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 根拠になったページ数の中央値 | 4ページ |
| 根拠が3ページ以下の企業 | 262社(44%) |
| Webで得た点の半分以上を、社長・CFOメッセージや説明会・インタビューのページから得ていた企業 | 158社(26%) |
IRサイトから集めたページは、1社あたり数十ページあります。それでもAIの答えを支えているのは、その中のわずか数ページです。ページを増やすことよりも、どのページに何を書くかが効いています。
根拠になったのは、どんなページか
Webページで点が付いた全項目(約2万2,000項目)について、根拠のページを種類別に分けました。

決算や財務のページ(14%)よりも、社長・CFOメッセージ(22%)のほうが多くAIの根拠になっていました。種類を特定できたページのなかでは、社長メッセージがもっとも「使われている」ページです。
なぜ、社長メッセージや書き起こしが効くのか
投資家がAIに聞くのは、「業績が変わった理由は?」「どんなリスクにどう対処している?」「この会社の強みは?」といった、理由や考え方を問う質問です。社長メッセージや説明会の書き起こしには、こうした問いへの答えが、経営者自身の言葉で、つながった文章として書かれています。
実際のAIの行動も、これを裏付けています。ChatGPT・Perplexity・Geminiに公式サイトの情報だけで答えてもらったところ、正しく答えたときの根拠のうちPDFだったのは、直近の業績の数字では69%でした。一方、リスクと対処では25%、投資ストーリーでは35%にとどまります。
理由や考え方を問う質問ほど、AIはWebページの文章から答えています。数字は表から拾えても、「なぜ」は文章でしか伝わりません。
事例:説明会とインタビューの書き起こしで84点
小松製作所は「AIの答えやすさ」84点でした。そのうち72点分は、次の3ページから取られています。
| ページ | 根拠になった項目 |
|---|---|
| 個人投資家向け説明会の書き起こし(2026年2月) | 競争優位、成長ドライバー、株主還元、中期経営計画など9項目 |
| 経営陣インタビューの書き起こし(2026年7月) | 業績変動の要因、業績予想と前提条件など6項目 |
| リスク要因のページ | 主なリスク、影響の道筋、対処方針の3項目 |
説明会の内容を、動画や資料だけでなく文章としてWebページに公開していること。それが、AIからの答えやすさに直結しています。
ただし、書き起こしやメッセージは古くなる
同じ小松製作所でも、「会社計画に対してどうだったか」は、2月の説明会の時点(前期)の説明しかありませんでした。そのため、最新の決算については評価の対象外(0点)になっています。
書き起こしや社長メッセージは、書いた時点の情報です。決算をまたぐと、そこにある数字や見通しは1つ前のものになります。実際、Webページに業績の数字があった企業でも、その根拠の半分は前の決算期のものでした(関連記事:「御社の『最新決算』、AIは1つ前の数字で答えているかもしれない」)。
AIの根拠になりやすいページだからこそ、古くなったときの影響も大きくなります。
明日からできる4つのこと
- 説明会・決算説明会の質疑応答を、文章でWebページに公開する 動画やPDFだけでなく、書き起こしや要旨をHTMLのページで。AIが理由や考え方を答える根拠になります。
- 社長メッセージや書き起こしに、日付と対象の決算期を書く 例:「2026年3月期 第1四半期決算を受けて」。AIが古い情報を最新と取り違えにくくなります。
- 決算のたびに、メッセージを更新するか、最新の数字を一言添える
- 数ページに頼りすぎない 業績の数字は決算サマリーのWebページへ、考え方は社長メッセージや書き起こしへ。役割を分けておけば、どこかのページが古くなっても答えが崩れにくくなります。
説明会はすでに開いている企業が多いはずです。その内容を文章で残すだけで、AIが使える根拠が増えます。
調査の方法
- 対象:東証上場企業のうち、IRサイトからWebページを5ページ以上取得できた3,321社(2026年10月3日時点)
- 方法:IRサイトを自動でたどって集めたWebページ(1社あたり最大50ページ程度)と、IRサイトからリンクされた最新の決算短信・決算説明資料を、AI(大規模言語モデル)が25の項目ごとに判定
- 検証:AIが挙げた根拠の引用が実際にページ上に存在するかをプログラムで照合し、確かめられたものだけを集計。1社につき3回判定し、項目ごとに多数決で決定
- ページの種類:根拠のページのURLに含まれる語(message、interview、highlight、riskなど)から分類した推定
- 実際のAIの行動:30社について、ChatGPT・Perplexity・Geminiに公式サイトの情報だけで答えてもらい、示された出典を照合した結果(小規模な検証)
詳しい採点の方法は、IR BASEの「スコアの仕組み」をご覧ください。
経営者の言葉を、AIが読める形で
AIの答えを支えているのは、ページの数でも資料の量でもなく、経営者が自分の言葉で語った数ページでした。説明会で話したこと、社長メッセージで書いたことが、日付とともにWebページにあれば、AIはそれを根拠に御社を説明します。
自社のIRサイトで、どのページがAIの根拠になっているか。IR BASEでは、項目ごとの判定と根拠のページをお示しできます。次の説明会の前に、一度確かめてみてください。
自社IRサイトの診断にご関心のある方は、お気軽にお問い合わせください。