AI検索に「A社の直近の業績は?」と聞くと、AIは出典を示しながら答えます。では、その出典は御社のIRサイトのどこなのでしょうか。Webページの文章か、決算短信のPDFか、それとも別のサイトか。
IR BASEでは、ChatGPTとGeminiに上場企業5社について投資家の5つの質問をし、AIが示した引用2,566件を一つずつ調べました。その結果、AIが業績の数字を答えるとき、根拠に御社のWebページが使われることはほとんどないことが分かりました。数字の根拠になった256件のうち、御社のWebページはわずか5件です。
AIは質問を、小さな検索に分けて探す
前回の検証(「AIは1つの質問を、約5本の検索に分けていた」)と同じく、今回もAIは1つの質問を複数の検索に分けていました。
| 質問 | ChatGPT | Gemini |
|---|---|---|
| 直近の決算 | 3.6本 | 3.5本 |
| 業績変動の要因 | 4.2本 | 6.9本 |
| 業績予想・中期経営計画 | 4.3本 | 6.0本 |
| リスク・課題 | 2.5本 | 6.0本 |
| 投資先としての魅力 | 3.4本 | 5.2本 |
検索に使われた言葉も前回と同じでした。直近の決算では「決算短信」「決算期」「進捗率」「四半期」、リスクでは「リスク」、投資の魅力では「株主還元」「中期経営計画」です。
業績の数字の根拠は、PDFか第三者のサイト
AIの回答のうち、具体的な数字(金額や比率)を2つ以上含む文について、その数字がそのまま載っている根拠の箇所を探しました(256件)。

AIが業績の数字を答えるとき、御社のWebページが根拠になったのは256件中5件だけでした。公式の情報を使うときは決算短信などのPDFを、そうでなければ株価情報サイトなど第三者のサイトのWebページを根拠にしています。
これは、これまでの記事で見てきたことと一致します。
- 多くの企業で、最新の業績の数字はWebページになく、PDFにしかない(「『強み』はWebに、『最新の数字』はPDFに」)
- 業績の数字ほど、AIは第三者のサイトから答える(「AIは御社の業績を、御社以外のサイトから答えている」)
つまり、御社のWebページに業績の数字がなければ、AIはそれをWebページの根拠には選べません。選べる場所は、PDFか、数字をWebページに載せている第三者のサイトになります。
ChatGPTは、引用の8割近くがPDF
AIごとに、引用のうちPDFだった割合を見ると、大きな違いがありました。
| AI | 引用のうちPDFの割合 |
|---|---|
| ChatGPT | 78%(質問ごとに72〜87%) |
| Gemini | 35%(質問ごとに18〜45%) |
ChatGPTは決算短信などのPDFを開いて読み、それを根拠に答える傾向が強く、GeminiはWebページを根拠にすることが多い、という違いです。どちらのAIにも正しく伝わるには、WebページとPDFの両方に最新の情報があることが大切です。
普通に聞くと、Geminiの出典のうち御社のサイトは26%
聞き方によって、御社のサイトが出典になる割合は大きく変わりました。
| AI | 「公式サイトの情報だけで」と頼んだとき | 普通に聞いたとき |
|---|---|---|
| ChatGPT | 97% | 78% |
| Gemini | 92% | 26% |
投資家が普通に質問したとき、Geminiの出典のうち御社のサイトは4分の1ほどでした。残りは、株価情報サイトやニュースサイトなどです。多くの投資家は、わざわざ「公式サイトだけで」とは頼まないでしょう。普段の聞き方でこそ、御社のサイトが選ばれる必要があります。
御社のWebページは、「計画・予想」を語る場所として使われている
御社のWebページが根拠になったときの段落を見ると、「計画」「予想」「見通し」といった言葉を含むものが多くありました。業績・見通しの質問で根拠の段落をより確かに特定できたもののうち、こうした段落は公式のWebページで64%、第三者のWebページで35%です。
御社のWebページは、数字そのものより、見通しや考え方を伝える場所としてAIに使われていると言えます。ただし件数は多くないため、傾向として受け止めてください。
AIが「どの文を」使ったかは、外からは分からない
今回、AIが出典のどの文を根拠にしたかを直接知る方法も確かめましたが、どちらのAIもその情報を返しませんでした。
- 引用のURLに、ページ内の該当箇所を示す印(
#:~:text=)が付いたものは、2,566件中0件 - Geminiは、根拠ごとの信頼度を返さなかった
AIが根拠にした文は、回答の文と出典を照らし合わせて推定するしかありません。今回は、回答に含まれる数字が出典にそのまま載っている箇所を根拠とみなしました。
確かめられなかったこと
もともと私たちは、「金額・決算期・比率・公表日が1つの段落にそろった文章ほど、AIに根拠として選ばれやすい」という仮説も確かめようとしました。しかし、根拠の段落を確かに特定できた引用だけで比べると、公式サイトと第三者のサイトの差ははっきりしませんでした。そもそも御社のWebページに数字の段落がほとんどなく、比べる材料が足りなかったためです。この仮説は、今回のデータでは確かめられていません。
IR担当者にとっての意味:3つのこと
- 業績の数字を、自社のWebページに載せる Webページに数字がなければ、AIは御社のWebページを数字の根拠に選べません。決算サマリーのページに、最新の売上高・利益・前期比を書きましょう。
- PDFも最新に保つ ChatGPTは引用の8割近くがPDFでした。決算短信や説明資料のPDFは、引き続きAIの重要な根拠です。
- 見通しや考え方のページを充実させる 御社のWebページは、計画や見通しを伝える場所として使われています。業績予想や中期経営計画のページを、決算のたびに更新しましょう。
調査の方法
- 対象:東証上場企業5社(市場・規模・評価がばらつくように選択)。個々の企業の結果は公表していません
- AI:ChatGPT(gpt-5.5、Web検索あり)、Gemini(gemini-3.8-flash、Google検索あり)。いずれもAPI経由で、2026年10月8日に実施
- 質問:投資家の5つの質問を、「普通の聞き方」と「公式サイトの情報だけを使って」の2通りで質問。回答は計100件、引用は計2,566件
- 「公式」の範囲:会社のドメインに加え、会社の資料を置いているIR配信サービスと東証の適時開示を含む
- 数字の根拠の集計:回答の文に含まれる数字(年を除く、3桁以上の数や小数・比率)が2つ以上あり、それが出典のページにそのまま載っている箇所を根拠とみなした。256件のうち220件はGemini、36件はChatGPTの回答
- 注意点:結果は実施時点のもので、AIのモデルの更新で変わる可能性があります。5社・100回答による小規模な検証です
詳しい採点の方法は、IR BASEの「スコアの仕組み」をご覧ください。
数字は、まず自社のWebページに
AIは、存在しないものを根拠には選べません。業績の数字が御社のWebページになければ、AIはPDFか、数字をWebに載せている第三者のサイトから答えます。数字の根拠を自社のWebページにしたいなら、まずそこに数字を書くことが出発点です。
そのうえで、PDFは引き続き最新に保ち、見通しや考え方のページは決算のたびに見直す。WebとPDFの両方を整えることが、どのAIにも正しく伝わるIRサイトへの近道です。
IR BASEでは、自社のIRサイトが投資家の5つの質問・25の項目に対してAIからどう読まれているかを、判定と根拠でお示ししています。
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